尾子 隼人
一方、古代ローマの博物誌家プリニウス(大)の著作『博物誌』全37巻では、動物誌、植物誌、また絵画、建築、彫刻等広範な領域にわたって記述されているが、古代ギリシアの地誌学者パウサニアスの著書『ギリシア案内』全10巻においては、ギリシア全土に存在する「美術品」を列挙・詳述しており、アセストルからクセノフォンにいたる彫刻家等180人の名が出てくる。作品の「解説」もポリュクレイトスの作品などについては詳細に述べられており、図こそないもののこの書物が「カタログ」の第一号ではないだろうか。
この様に「作品」が存在する地を旅し「カタログ」を記した本来の紹介・鑑賞の仕方から他人様の所蔵品を一カ所に集め、ひとりであるいは大勢で鑑賞することがいつ頃から行われる様になったのかははっきりしない。世界に冠たる大美術館の成り立ちの経緯にも興味深いものがある。
1972年に設立された国際交流基金は、その主たる業務のひとつとして美術展の交流を実施しているが、設立以来1995年までに実施した展覧会の数は、主催90件、基金の所蔵品による巡回展137件、国内展10件、第三者が企画・実施するものに対する助成227件を数える。これらに付随して作成される「カタログ」のユニークな点は、ほとんど全部が日本語以外の言語で作成されることである。また日本全国の国公立・私立の美術館が実施している展覧会の数、これらに付随して発行される「カタログ」の数を把握することは殆ど不可能と言おうとしていたら、これは可能であると(財)国際文化交流推進協会が「カタログ収集プロジェクト」を開始された。基金も共催者として関係機関の協力を得つつ「カタログ」を収集、現物を米国スミソニアン研究所に送付している。この度、国内に国際文化交流推進協会が「アートカタログ・ライブラリー」を設立されたことは、美術界の永年にわたる希望を実現されたことであり、同協会の御尽力に深い敬意を表すると共に、将来は「カタログ」の「カタログ」を作成されることを望みたい。