JACプロジェクトと米国側に於ける
ディポジトリー・ライブラリー開設について
松戸 保子
最近、とみに米国の日本美術研究者の間から、日本の近・現代美術に関する情報不足の声が高まってきた。それがきっかけとなり、全米日本研究図書館調整委員会 (National Coordinating Committee on Japanese Library Resources (NCC)) に対して、研究者、図書館関係者より「美術展覧会カタログ収集プロジェクト」という形で提案がなされた。折しもその組織や活動が軌道に乗りつつあったNCCは、このプロジェクトを全面的に支持し日本美術展覧会カタログを収集して米国内で幅広く提供することを主な目的として、昨年の9月にその主要なプロジェクトのひとつとして発足させた。
昨年11月には早くも日本美術展覧会カタログ収集プロジェクト日米合同委員会会議が、国際交流基金および国際文化交流推進協会 (ACE Japan) 共催のもとに東京で開かれた。米国側からは日本美術研究者、ライブラリアン、NCCのプロジェクト担当者が招かれ、日本側の委員会 (美術館・図書館関係者・プロジェクト共催機関代表者)と共にプロジェクト全体の構想から実際のカタログ収集・保管・流通まで様々な問題を協議した。正式名称も"Japan Art Catalog Project(JAC プロジェクト)"と決まり、実施への準備が整った。日本側では、合同会議に先立ちプロジェクトの概要を定めて組織的・財政的な支援態勢を整えつつあった。一方、米国側でも米国内に於ける日本の美術展覧会カタログ収集の現状やプロジェクトの意義について、電子メールを用いて全国的な調査を行ったが、研究図書館だけではなく美術館からもかなりの反響があり、このプロジェクトが高い支持を得ていることがわかった。その旨を合同会議で報告できたのは幸いであった。
米国側は、この合同会議による決定事項に基いて日本側で収集するカタログの米国側の受け入れ先、つまりディポジトリー・ライブラリーの選定という重要なホームワークをかかえて帰国した。ディポジトリー・ライブラリーは、プロジェクト全体の主旨や具体的な目標を充分に理解すると同時に、ディポジトリー・ライブラリーとしてのサービス機能をも果たす必要がある。この要件を満たすために次の様な項目が条件として考えられた。
- すでに研究レベルの日本美術資料を所蔵していること。
- 美術カタログの収集・保管のための適切な物理的環境を備えていること (スペ ース・湿度・温度調整・安全性など)。
- 速やかに整理して全国的なデータベースに書誌情報を入力する能力を持ってい ること (この為には日本語の資料を整理できるプロフェッショナル・ライブラリアンがいるということが条件となる)。
- 資料の利用については一般公開を原則として、館内閲覧は勿論のこと、相互貸借および文献複写によるサービスを無料で行うこと。
これらの条件を主な選定基準として、今年の2月の始めにJACプロジェクト・ディポジトリー・ライブラリー希望者を全国的に公募した。その結果三館の美術館と一館の大学図書館、計四館から応募があった。どのプロポーザルも熱意のある自信に満ちたものであった。プロジェクト選定委員は、各々のプロポーザルを基準のひとつひとつに照らし合わせ、不明僚な点は応募機関に問い合わせて回答を得るという時間をかけた厳密な審査を行った。その結果、スミソニアン研究所のフリーア美術館の図書館がディポジトリー・ライブラリーに選定された。フリーア美術館は全ての条件を満たしていた。日本美術の展覧会のカタログを含む優れた研究資料を所蔵し、環境条件も整っており、JACプロジェクトの資料の利用については特別に便宜をはかるというコミットメントをあきらかにしていた。また、日本語資料の整理やサービスの経験がある職員の構成も重要な決定要素であった。さらに、ワシントンD.C.という地理的好条件もあり、近辺に集中している各種美術館や国立議会図書館などに立ち寄った際の潜在利用者も考えられる。この決定は米国内では好評で支持を得ている。
米国側では、JACプロジェクトについて発足当時からディポジトリー・ライブラリー決定・発表にいたるまで、電子メール、その他の手段により全国的に情報を流しており、美術館界からも注目をあび大きな期待が寄せられている。この7月に1,200冊にのぼるカタログの第一便がACE Japanから出荷され、いよいよ9月からフリーア美術館図書館でプロジェクトに着手できることは米国側関係者としては喜びにたえない。
フリーア美術館の紹介とプロジェクトの進行状況については、またの機会に譲り、末筆ながら日本側のJACプロジェクト協力美術館・プロジェクト支援機関およびプロジェクト発足以来、労を惜しまぬ努力をされてこられたACE Japanのプロジェクト担当者の方々に厚く御礼を申し上げると同時に、関係者各位のさらなる御協力をお願いしたい。
まつど やすこ: NCC/JAC プロジェクト委員長
ミシガン大学アジア図書館副館長
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